住人たちは、昼間「高羽」に戻って壊れたものの後片付けをし、夜、避難所や退避所に泊まるようになった。家のなかはあらゆるものが倒れ、飛び出し、壊れ、惨悒たる状況だった。Tさんは、好きで集めた食器類がすべて割れ、絶望的な気分になりそうだったが、「命は助かった。全財産を失ったわけではない」と気を取り直し、片付けに精を出した。大量のガラス片を処理するには「紙袋」が重宝された。生ごみ用のポリ袋はすぐに切れてしまう。
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Tさんは紙袋を集めて「高羽」の玄関先に「自由にお使いください」と積み上げた。住民たちは重い悲しみと激しいショック状態から少しずつ「復興」へと身の置き場を変えていった。建て替え費用の二割で補修できる同じマンションでも棟の位置・方向によって被害はさまざまだった。南向きに建つ二号棟は南北方向の揺れに強かったのか、皿一枚割れなかった家もあった。一号棟と三号棟のSRC(鉄骨鉄筋コンクリート造)部分では「雑壁」と呼ばれる耐力への影響の少ない壁に亀裂が入り、玄関ドアが開かなくなった住戸も現れた。最も損傷を受けたのが、三号棟の四階建てRC(鉄筋コンクリート造)部分だった。同じ三号棟でも、坂を利用して建設されたので、坂上に位置する部分は階数が低く抑えられ、鉄骨を入れないRCになっている。見た目の被害もこの三号棟のRC部分が最も目立った。住人たちは、この建物が補修できるかどうか気をもんだ。