「美の原則」の大枠は八つある。(1)場所−建築はその場所を尊重し、風景を破壊しないようにする。(2)格づけ−建築物はその場所についての伝統にしたがう。(3)尺度−建築物の尺度も基準は人間であり、その大きさも人間の大きさと調和したものでなければならない。また、周囲の建物という尺度にも調和しなけばならない。(4)調和−建築は町の青い海、緑の自然、そして町全体と調和しなければならない。(5)材料−建築は町の材料を生かしてつくらなければならない。
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(6)装飾と芸術−建築には装飾が必要であり、町独自の建築装飾をつくりだす。(7)コミュニティ−建築はコミュニティを育て、守るものでなければならない。(8)眺め−建築も眺めの一部であり、美しい風景を育てるものでなければならない。そして、この大枠のそれぞれに注意すべきキーワード、つまり建築設計にあたって守るべき具体的な細目を決めてある。たとえば、場所については、聖なる所、豊かな植生、静かな瀬戸、斜面地など、真鶴の歴史、地勢、雰囲気などを考慮したキーワードがあげられている。聖なる所とは、町内にある御林といわれる森林や貴船神社、灯明山など歴史にゆかりのある十七ヵ所で、これらに影響をあたえる開発は認めない。こうした大枠やキーワードを町民や業者が守ることによって、町の住環境や自然が保護されるばかりでなく、町全体がより美しくなる。要約すれば、聖なる所を守りつつ、乱開発を防ぎ、化学洗剤を使わないなど自らの生活を「規制」しながら、自然と調和し、最終的には汚染に敏感な夜光虫を海に取り戻すという目標を掲げてまちづくりをするのである。そして、一つひとつの建物の屋根や玄関、あるいは町の坂や道路、そしてそこでくりひろげられる人間の営み(お年寄りの家や子どもの家、あるいは民宿の食事から祭りまで)に注意を向けて開発を誘導していこうというのである。これは建物の形だけをコントロールする、各地の景観条例とは異なる、包括的な新しい提案といえる。